あなたのギャップにやられています

幸い俺は、学生の頃何度か海外を経験しているから、片言の英会話はなんとかなる。
だけど冴子は、英語が苦手なようだ。
すると、イギリスで仕事にありつける確率はかなり低い。


悩みに悩んで、冴子を置いて旅立つ決断をした。
それはもちろん、別れではなく、俺たちの未来のためだ。


だけど、彼女に将来の約束をしていくことができなかった。
それは……万が一失敗したときに、彼女まで巻き添えにしたくなかったからだ。

もしも自分はダメでも、冴子には幸せになってほしい。
悔しいけれど、それが別の男とだったとしても。


なにも言わずに旅立つ俺を、冴子は待っていてくれるだろうか。

そんな女々しい思いを抱えながら、戸塚部長に聞いた冴子の引っ越し先の住所に、俺の部屋にあった炊飯器を送ろうと思った。

肉好きの冴子の健康管理がすごく心配だ。

そして、炊飯器には……待っていてほしいという意味も込めた。
いつかまた、同じ釜の飯を食いたいという。

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