あなたのギャップにやられています

イギリスの生活は、ロンドン郊外の小さなアパートからスタートした。
古ぼけたアパートだったけれど、ここがロンドンというだけで妙にお洒落に感じる。

窓の外に見える街並みが気に入った俺は、その窓のすぐ横に、画材道具を置いた。
ここから始めるんだ。
画家としての、自分を。


初めて訪れたビッグベンは、テムズ川にかかるウェストミンスターブリッジから見ると、かなりの迫力だった。

これが写真でよく見る光景だと興奮したけれど、この迫力をいつか絵にして冴子に見せてやりたいなんて、すぐに彼女を思い出してしまっているのに気がついた。

どうやら、日本を発ったくらいでは忘れられないらしい。


イギリスについて数日は、とにかくいろんなところを見て、イギリスを感じて来いと、俺を見出してくれたアーチボルドさんに言われて、世界最大級のギャラリーと言われるナショナル・ギャラリーに足を運んだ。

< 649 / 672 >

この作品をシェア

pagetop