あなたのギャップにやられています
俺を見出してくれたアーチボルドさんは、細かいアドバイスをくれたものの、「雅斗がこれだと思った絵が一番なんだ」と笑った。
俺が描きたいのは彼女ひとり。
心から愛しい彼女の姿。
イギリスに来て、それを改めて感じた。
どれだけ離れても、俺の心の真ん中に居続けるのは、冴子ただひとりだったのだ。
アトリエから家に帰る途中で、夜空を見上げながら、冴子もこの星を見ているかもしれないなんて、未練タラタラの思いを描いていたのは、恥ずかしくて誰にも言えない。
イギリス生活で日本にいたときと違うのは、同じ志をもった仲間がいたことだ。
俺たちは互いに絵を見せ合い、構図や色遣いについて何度も何度も議論した。
俺以外の仲間は、アーチボルドさんに絵の教えを請うために、月謝を払って通ってきていた。
だから、アーチボルドさんに認められ、無償でアドバイスをもらう俺に、うらやましいと口をそろえた。