あなたのギャップにやられています
同期のデザイナーのデザインがしっくりこなくてダメ出しが続いたとき、脇の小さなイラストを提案したのは木崎君だ。
そして、それが見事に採用になったこともあった。
だけど、表に出るのは同期の名前だけで、木崎君の名はどこにもなかった。
正直言ってあの時は、抗議したい気持ちでいっぱいだったけれど、木崎君がそれを止めた。
「あれは僕の作品ではないですから。僕は僕の持ち味で勝負します」
とただ一言で。
そんな彼の言葉に、「それじゃあ勝てないよ!」と言い返したこともあったけれど、木崎君が本当に絵が好きで、なんの駆け引きもなく一心不乱にデッサンしているところを見ていたら、そんなちっぽけなことはどうでもいいんだと感じるようになったのだ。