あなたのギャップにやられています
星の降る丘
再びビートルに乗り込むと、私は興奮ぎみに口を開いた。
「木崎くん、この絵ありがとう。
なんだかごめんね。売るつもりだったんでしょ?」
「いや。お金がほしくて売っている訳じゃないから気にしないで。
誰かに認められたいっていうか……俺の作品をいいと思ってくれる人を見つけたかっただけなんだ」
「へぇ、そうなの?」
私があの絵をじっと眺めていると、運転席から手が伸びてきて、ひょいとそれを取り上げた。
「これがあるの、冴子のおかげなんだ」
「えっ?」
「実は入社した頃、仕事以外の絵をやめるつもりでいた」
「そんな……」
「だけど、俺の絵をいいっていってくれただろ?」
そういえば、初めて彼のデザインを目にしたとき、他の人とまるでタッチの違う彼のデッサンを見て惚れ込んで、ずっとそのまま描いていてほしいなんて頼んだっけ。
素人なのに、そんな大胆な発言したりして。
今となっては恥ずかしい。