ブラッディ トゥ ナイト
いったい気に入られるには、どうしたら良いのだろうか……。
悩んでいると薄暗かった店内が更に暗くなる。
店内が少しざわめく。
「何が始まるんですか?」
僕は照らされたグランドピアノとスタンドマイクを見つめるマスターに問う。
「うちの自慢の歌姫です」
ピアノの音色が流れ始めると、紫色のキラキラしたドレスに身を包んだ歌姫と呼ばれる色白の女性が、スタンドマイクの前に立った。
仮面を付けていて口元しか見えないが、肌がツヤツヤしているのが分かる。
赤いルージュが艶かしく光る唇が動く。
歌姫は英語で柔らかく歌い始めた。
その瞬間、店内全ての話し声が止まり、皆うっとりと歌姫を見つめている。