ブラッディ トゥ ナイト
紗栄子さんの背中を見つめ、そんな言葉しか言えなかった。
「ねぇ梓くん、このあとお時間あるかしら?出張中のお父さんがイギリスから美味しい紅茶を送ってくれたの」
連絡はたまにしていたが、顔を合わせるのも家に上がるのも2年以上していなかった。
こちらを向いた紗栄子さんと目が合い、正直気まずいと思ってしまった。
返事に困っていると、紗栄子さんは眉をハの字にしてしまった。
「……お仕事だったかしら?」
首を傾げる動きに合わせて、ゆるく巻かれた黒髪が肩の上で揺れる。
「あ、いえ。夜に打ち合わせがあるので、少しだけなら……」
夜には火茂瀬と歌姫の話を聞く事になっているので、本当に少しだけだが、お茶を頂くことにした。
「嬉しいわぁ」