ブラッディ トゥ ナイト
本当に嬉しそうな顔をしている紗栄子さんを僕の車に乗せ、先ほど通り過ぎた豪邸の前に車を停めた。
庭に咲いている花の香りが風と共に僕の鼻をくすぐる。
甘く切ない懐かしい匂いだ。
昔から紗栄子さんは美味しいお菓子や紅茶などがあると、よく僕たちを家に招いてくれた。
「今持って来るから、適当に座っていてちょうだい」
紗栄子さんはどこか楽しそうに小走りでキッチンに消えてしまった。
僕は言われた通り、L字型の白い革のソファーに腰を下ろした。
目の前には背の低いガラステーブルと大きな液晶テレビ。
そのテレビを囲う様に置かれた棚には萌の写真が所狭しと並べられていた。
壁にはファッションショーに初めて出演した時の写真が額に入れられ飾られていた。