ブラッディ トゥ ナイト
「その名前で呼ばないでッ!頭が、痛くなる……ッ……」
萌が頭の痛みに苦しんで、耐えるように奥歯を噛み締める。
拳銃を向けられているが、ゆっくりと歩み寄る。
火茂瀬は萌の様子が変わったタイミングで部屋から出た。
おそらく既に客を避難させている白城に状況を伝えに行ったのだろう。
「思い出して、萌」
「やめてっ……」
萌はこの催眠薬が充満する部屋で監禁され、完全に意識が隔離してしまっている。
催眠薬の混じる香水のせいで、この部屋を出ても、操られ続けていた。
自分の名前を忘れ、僕の顔すら忘れるほど、長い間、術の檻からでられないでいた。