ブラッディ トゥ ナイト
普通ではない。
「俺ね、デビュー当時からの大ファンなの。もちろん萌ちゃんのファンクラブ入ってるよ。萌ちゃんの載ってる雑誌も新聞も、洋服のカタログとか写真集、全部、保管用・観賞用・使用用で3つずつ持ってるんだ」
青年は私のプロフィールや行きつけのお店、家族の事や仲良しのモデルさんや友達とのエピソード、他にも住所や私に関する事を愛おしそうに話し続ける。
熱狂的な私のファンだと言うことは理解したが、自分の事はあまり話さない。
青年は何者なのだろうか。
「それでね、俺は萌ちゃんの言葉を信じてたんだよ。こんなに綺麗で素敵な人が嘘を吐くなんて思わなかった……」
私は青年の顔を見ないように目を瞑っていたが、声を聞いてるだけで青年が怒り始めているのが感じられた。
「みんなの萌ちゃんなのに……だったら、俺だって独り占めしたって良いじゃないか」
硫酸を掛ける必要は無いはずだ。
「萌ちゃんに硫酸を掛けたのは心苦しかったけど、俺には丁度良かった……」