ブラッディ トゥ ナイト
洗面所から水の勢い良く流れる音が広い家に響く。
きゅっと蛇口のひねる音が聞こえ、火茂瀬がリビングに戻ってきた。
「夢で彼女に会ったら梓さんの相手もするように伝えておきます。梓さんは被害者の顔も名前も知ってるから証明になるでしょ?」
「それはそうだが……別に泊まる必要は無いんじゃないか?幽霊なんだから場所なんて関係ないと思うし……」
そもそも霊が存在するなんて思っていないが、存在すると仮定して実体が無いのだから瞬間移動でも出来るんじゃないかと、僕は思う。
「女性に手間は掛けさせない。それが男ってもんじゃないスか?」
……僕の所に移動する時点で手間を掛けさせてると思うのだが、同じ部屋なら問題無いのか?
霊の事はよく解らない。
「さ、とりあえず寝ましょう!時間ちょっと過ぎちゃってる!女性を待たせるのは失礼ですよ」
納得していない僕なんて関係なしに、火茂瀬は僕から荷物を取り上げ、布団の準備を始めた。