蕾は未だに咲かないⅠ


…嘘だろ。


口を閉じたまま固まった俺に、鶴来さんは小さく舌打ちをして冷たい瞳を向ける。

俺はさらに、何も言えなくなった。鋭いそれは、逆らえない。


「知らねえのか。」

「……城崎、明津です。」


次は俺自身に呆然とした。

覚えるつもりなんてなかったのに、しっかり脳に刻み込まれている。俺の料理を、美味いと言ってくれた声音も。


輔さんに、蔑まれたのに。

けれど鶴来さんも、俺と同じように変化してる。


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