蕾は未だに咲かないⅠ
「そうか。」
名前を聞くと、さして興味なさそうに立ち上がる鶴来さん。
不意に城崎明津に向けた視線は、酷く冷たい。心から冷め切った瞳をしている。
と、俺はもう1つの変化に気付いた。驚いて顔を上げ、立ち去りかけた鶴来さんに声をかける。
「手、どうしたんスか。」
鶴来さんの片手が、包帯で巻かれている。
その手の指先が、俺の言葉にピクリと反応した気がした。その顔に動揺は見られない。
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