蕾は未だに咲かないⅠ
おかしい。鶴来さんが、そんな怪我をするなんて。さらに、包帯もしてるくらいだから深い傷なのだろう。
自然と拳を握る。
するとそれを見抜いたかのように、鶴来さんの目がこちらに向けられ俺を射抜いた。
「…挑発したら、意外に真正面で返されてな。」
「……そう、ですか。」
つまり、鶴来さんの挑発に乗った相手が真正面から突っ込んで来たんですね。
俺がそう理解し目線をズラした時、鶴来さんの視線はアイツに向かっていたのを、俺は知る事はなかった。