蕾は未だに咲かないⅠ
一気に力が抜け、見上げた視線を下に戻す。
全てが黒く綺麗な顔をした彼は、持っていた御盆をテーブルの上に置く。一連の動作が無造作なようで、綺麗だ。
あたしは無言。
彼、鶴来さんも暫く無言だったけど、あたしより先に口を開いた。――予想外の言葉で。
「この生活がキツいか。」
一瞬、あたしは疑うような目を向けてしまった。だって、今、この人。
「気遣うんですか?」
「………別に。聞いただけだ。」