蕾は未だに咲かないⅠ


輔さんは、静かに、機械のようにあたしを見つめる。その目はあたしの大嫌いな目だ。


「…困ったな。どうしようか」


彼は目を細める。一時でも目線を外して欲しいと願うけれど、それは叶わない。

彼はあたしの動作全てから、見抜くつもりだ。


泣き出しそうな空。

もう少しで、もしかしたら逃げれるかもしれないから、もうちょっと待ってよ。お願い、まだ泣かないで。


「…………分かりました。」


あたしは、静かに目線を下にやる。


< 121 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop