蕾は未だに咲かないⅠ
そして目を点にした彼に数センチ近付き、常にと言ってもいいほど着ている薄いグレーのカーディガンのボタンに、手をかける。
「――…逃がして下さい。代償を、差し出します。」
――あたしの身体を。
あの鶴来さんの勝利の笑みを崩せるなら、また元に戻れるのなら、此処から逃げれるのだったら。
あたしは嘲笑した。
輔さんの、訝しむような顔が面白くて、あたしが落ちたことがおかしくて。
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