蕾は未だに咲かないⅠ


後悔はない。

処女だったら激しく泣いていたりしたかもしれないけど、あたしは幸い処女じゃなかった。

ただ――どうしようもない嫌悪感がある。


あたしは全てを飲み込んで、輔さんの背中に「あの」と声をかけた。

その背中に掠り傷や打ち傷のような痣があったけれど、あたしにはどうでもいい。

輔さんは振り返り、垂れ目を向けて首を傾げる。


「何?」

「――逃げます、今直ぐに。あたしの持ち物を返して下さい。」


< 130 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop