蕾は未だに咲かないⅠ
後悔はない。
処女だったら激しく泣いていたりしたかもしれないけど、あたしは幸い処女じゃなかった。
ただ――どうしようもない嫌悪感がある。
あたしは全てを飲み込んで、輔さんの背中に「あの」と声をかけた。
その背中に掠り傷や打ち傷のような痣があったけれど、あたしにはどうでもいい。
輔さんは振り返り、垂れ目を向けて首を傾げる。
「何?」
「――逃げます、今直ぐに。あたしの持ち物を返して下さい。」