蕾は未だに咲かないⅠ


すると輔さんは「ああ」と思い出したように呟き、煙草を透明な灰皿に押し当てて笑った。


「悪いけど携帯だけなら返してやれる。他はユウが管理してて知らないんだ。携帯は色々面倒だから、ってね。」

「………そうですか。じゃあ携帯だけ返して下さい。」


真っ直ぐに見つめると、のらりと視線を外して「はいよー」と滑らかに立ち上がる輔さん。

そして彼はシャツを素早く着て、部屋を一旦出て行った。


携帯以外返して貰えないならば、住んでる部屋の鍵も無理なのか。どうしようか。


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