蕾は未だに咲かないⅠ
しばらくの静寂が訪れ、しかし輔さんが携帯を取り出した事でそれは破られた。
す、と突き出されるそれ。
「親とかに電話しといてね?」
「――…」
あー…。
目の前で電話してもらう、って事か。親に前提的に言えば捜索願も出されないし、それに彼の携帯に履歴が残るのも、彼らにとって好都合。
本当、嫌になるくらい頭の切れる人。
「構いません。親はいないので。」
「そう?ああ、だから素直に従ったのか。」