蕾は未だに咲かないⅠ
輔さんは独りでに皮肉ったように頷き、携帯をポケットに入れ、その明るい茶髪に触れて頭を掻く。
さて、これからどうしよう、ってとこかな。
――今更だけど、親はいないけど“家族”はいるんだよね。けど多分関心ないだろうし、大丈夫…。
「あの、…明津ちゃんでいいかな?」
「はい。」
「明津ちゃんをひきかけた車に乗ってたのが、さっきの奴で、名前が鶴来悠貴(つるぎ ゆうき)。」
「鶴来…」
そういえば、気弱な人が“ツルギさん”と呼んでいた気もする。
「…あの、此処は?」
「ああ、此処は…ユウ、悠貴の家の別邸だよ。君がひかれかけた所からは離れてるよ、多分。」