蕾は未だに咲かないⅠ


しばらく経った後、再び襖の戸が開いた。


開けた輔さんの手には、緑と黄色とオレンジが散らばったお粥。それが、あたしの目の前のテーブルの上に置かれる。

あったかい。湯気がたってる…。

何だかそれだけで胃が安心して、しっかりとした空腹感を感じてきた。


「どうぞ。」

「ありがとうございます。いただき、ます。」


いただきます、だなんて。一体いつぶりだろう。ろくな食生活を送ってなかったし、ましてや部屋で食べるなんて事もなかった気がする。


思わず口元が緩み、それを隠すようにあたしはスプーンで粥を掬って口に運んだ。


< 24 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop