蕾は未だに咲かないⅠ
すると、彼が微動だにしなくなった。
固まって、こちらを凝視したまま。睨みはすっかり失せて、“呆然”と言うのが合う。
思わずこっちが固まった。
な、なに。
「……別に、」
「?」
彼は我に返ると、ふてぶてしい顔で御膳を手に取り、此方から目をそらして背を向ける。
そして、聞いてしまった。
彼の独り言か返事か図りかねる、つぶやきを。
「別に…てめぇの為に作ってるワケじゃねぇし…。」