蕾は未だに咲かないⅠ
彼は、漆黒の服装をしていた。
黒のブレザーのような上着に、チェーンの付いた黒のズボン。透明な傘が、さらにその美しさを上手く演出してた。
久々、と言うか軟禁された初日から会ってなかった。
ならば今だって会えなければ良かったのに。何で鉢合わせしてしまうんだ。
「っ、…ハ、ハァ…」
そして、思わず背筋が一瞬凍った。
――この人、今捕まえようとした?手が服をかすったような気がするんだけど。