蕾は未だに咲かないⅠ


ならばと速さを上げる。どうにも彼には勝てる気はしないが、撒ければこっちのモノ。


あたしは住宅地を、手当たり次第に曲がった。

雨で視界は最悪。足は裸足で痛々しい。打撲が残る箇所は熱を持つ。

でも…


「っんで…」


何で撒けないの?


心の隅で「無理だ」という気持ちと「やめてしまおうか」という諦めが浮かぶ。

でも、今捕らえられたらそれこそ、何をされるか分からない。


――考えろ、考えろ。


< 58 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop