蕾は未だに咲かないⅠ
ならばと速さを上げる。どうにも彼には勝てる気はしないが、撒ければこっちのモノ。
あたしは住宅地を、手当たり次第に曲がった。
雨で視界は最悪。足は裸足で痛々しい。打撲が残る箇所は熱を持つ。
でも…
「っんで…」
何で撒けないの?
心の隅で「無理だ」という気持ちと「やめてしまおうか」という諦めが浮かぶ。
でも、今捕らえられたらそれこそ、何をされるか分からない。
――考えろ、考えろ。