蕾は未だに咲かないⅠ
◆
引っ張られるまま足を突き動かしていると、着いたのはいつもいた別邸で、連れ戻されただけだった。
と思っていたのだけど、それは少し違った。
戻った時、汚れたまま浴室に放り出され、相変わらず無言の威圧をかけられた。
そして身体を綺麗にし、新しい服に身を包み――
「え」
鶴来さんに「来い」と淡白に言われて連れて行かれたのは、二階だった。
中庭側なのは変わりないけど、窓は小さいし、とてもじゃないけど逃亡は不可能だ。