蕾は未だに咲かないⅠ
どれだけ否定したって、あたしの記憶に住宅地があるのは事実だ。
そうなれば、あたしは誰かに助けを求める事が可能になる。もう逃げる気力なんてないけど。
彼は信用しない。
ただ射抜くような双眼が、冷たい空気が、この一室を凌駕している。
「此処は俺の寝床だ。」
「は、はあ…」
「テキトーに使え。今度逃げたら、お前の存在ごと消す。」
些か冗談に聞こえない。この人はどうして執拗なのだろうか?