蕾は未だに咲かないⅠ
◆
「…は?」
は?今、今輔さん何て。
俺は開いていたスポーツ新聞を閉じ、充分煮てきた模様のカレーの存在を頭から一瞬で消し去る。
輔さんは麦茶を飲み、溜め息をつきながら再度言う。
「逃げ出して、今別邸周り捜してるけど居ない。やられた。」
「―――…」
逃げ出した、って…。
「……度胸、あんな。あの女」
「でも結局、耐えられなかったっつー事だな。所詮はただの女だよ。」
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