蕾は未だに咲かないⅠ


「正当防衛だ。それを“俺から自分の身を守る為に”使ってみろ。」

「―――っ!!」


ぎゅ、と。冷たい感触が、頭の中を浸食した。


彼は冷たい目で、あたしを見下ろしている。傷付けて、あたしにこれを“使わせよう”としている。

魂胆は見え見えなのに、ナイフを掴んだ手が震えるのは――何故。


「―――どうした?」

「…、っ………ぁ…」

「怖いか?」

「―――。」


イヤ、嫌嫌嫌。こいつに全部“壊される”。全部、全部、恐怖、ナイフ、手、手が赤、


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