蕾は未だに咲かないⅠ


「っあ?」

「そうするくらいなら、」


彼を押しのけると、押しのけた手とは違う方の手に、さらに力が籠もった。血が止まる感覚がする。


それでもあたしは、ナイフの柄を握り締める。

彼が「理解出来ない」と言うように顔を歪めた。あたしはその綺麗な顔から、目線を外す。


そして、ナイフを首筋に当てた。冷たさが、現実を感じさせる。


「死んだ方がマシだ。」

「―――おい、っ」


< 94 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop