蕾は未だに咲かないⅠ
そのままの力で、勢いをつけるためナイフを少し横に離す。
その一瞬、幾つかの人物が脳裏で思い浮かんだ。あたしの自殺行為を止めるには、充分な素材だった。
けれど、止まるわけにはいかない。死ぬわけにも、いかない。
あたしは生き延びてみせる。これは彼への“本気”を示す為なんだ。例え、ナイフで血みどろになったとしても、生き延びる。
彼はまた、あたしの目を見てピクリと反応する。
あたしは、ただ彼に「見てろ」と言うふうに見つめた。