雨情物語⑤<雀の涙>
――― 御前、あなたは美しい存在です。


その涙は海にはなりません。
大きな存在に消されることなくそこに留まる潔さを、わたしは美しいと思うのです。


美しい生き物でありたいと、願うのです。


どろりとまとわりつく雨の澱をハンカチで拭いながら、わたしは考えるのです。


未練を残す美しさを。
諦めきれない想いの強さを。

自らの涙にからめとられた雀の愛しさを。


――― ガラでもないと笑うのは誰です?


降りしきる雨は小川の流れとなり、地球の重力のままに流れていきます。流れて行くことを拒否した涙だけが、粘性を増し留まろうと足掻いています。


足掻き続けて生きていきたいと、願う雀でありたいのです。
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