Chain~この想いは誰かに繋がっている~
私たちバイトは、上映が終わると掃除までする。

飲み物やポップコーンのゴミ、チケットの半券、そんな物が床に落ちているのだ。


「はあああっ。」

私は深いため息をつく。

「もうやめてよ。いくら今日のゴミが多いからって…」

「違うよ。」

美希からの注意は日常茶飯事だけれど、今の私には無駄だ。


「なに?またあの人のこと?」

素直にうんと言えないのは、美希が仕事と恋愛を、きっちり分ける人だからだ。

「言ってしまえば?」

「何て?」

「好きですって。」

意外な美希の答えに、唖然とする。

「無理。」

「なんで?」

「まだ客と店員だもん。」

言っても、振られるに決まってる。


「本当に好きなんだね。」

「好きだよ。」

美希が呆れる以上に、私の方が呆れている。

「なんだかなぁ。」

そう言って美希は、曲った腰を伸ばした。

一方の私は、腰は曲がりっぱなし。

全く前を、向いていない状態だった。
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