Chain~この想いは誰かに繋がっている~
ええい!クヨクヨしても始まらない!!

私の人生に賭けて、この恋を実らせてやろうじゃないか!!


「大人一枚。」

待ってました!

「はい、いつものど真ん中のお席、ご用意してあります!」

勢いよく彼の手の平に、チケットを乗せた。


「いつもと……同じだね。」

「えっ?」

なに?聞こえない。

私はせっかくのチャンスを逃さないよう、体を前に突き出した。


「何でもない。ありがとう、映梨子ちゃん。」

「は、はい。」

またしても、失敗。

今日も客と店員の垣根は、越えられなかった。

そして彼は、小さなシアターへと消えて行く。

もう何度、この情景を見てきただろう。


「ねえ、美希。」

「ん?」

カウンターの奥にいた、美希が振り返る。

「恋って、どうすれば実るのかな。」

私の本気の質問に、美希はため息まじりに答えた。

「難しすぎて、私にはわからないな。」
< 107 / 125 >

この作品をシェア

pagetop