Chain~この想いは誰かに繋がっている~
こういう、臆病なところもあるんだよ。

気づけよ、その同僚の男ってヤツ。


そんなヤツ、やめてしまえ。

やめて、俺のところへ来い!

いつもだったら、そんなセリフでも言い放って、息もできないくらいに、強く抱きしめているのに。


ダメだ、ダメだ。

彼女はヤツが好きなんだ。

無理にこっちへ向かせても、夏目さんを傷つけるだけだ。

ここは大人になって、彼女の幸せを第一に考えてあげるべきなんだ。


「親方?」

「は、はい!?」

急に呼ばれて裏返った声に、夏目さんはクスクス笑っている。

ああ、可愛い。

「私、もう帰るね。いくら?」

「そうだな、4,000円でいいよ。」

「はははっ!ちゃんと計算してよ、親方!そんなアバウト勘定じゃあ、いつか潰れちゃうよ?」

そう言って、またクスクス笑う。

「じゃあ、4,200円。」

「はいはい。消費税分も払えってね。」

長い指先で、お札を数える。
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