Chain~この想いは誰かに繋がっている~
そんなある日、俺のその決意を破るような出来事が起こった。


週明けの月曜日。

一週間の中で、一番客の少ない日。

その日も、店を開けて1時間しても、一向に客は来なかった。


「そもそも、人、歩いてんのか?」

カウンターを出て、店の扉を開ける。

一瞬で目に入った、夏目さんの放心状態の顔。

俺は心の中で、大きな声をあげた。

いくら好きな女性でも、これは心臓に悪いだろ。


「いらっしゃい、夏目さん。」

「親方……」

ここがどこかわからないという表情で、辺りを見回す。

こんな早い時間に店に来るなんて、いつもの夏目さんじゃないみたいだ。


「どうぞ。」

それでも夏目さんは、夏目さん。

「……私、一人?」

「そうですよ。今日は月曜日ですからね。」

カウンターの中に入って、温かいおしぼりを渡す。

何があったかは、客から話してこない限り、こちらからは聞かない。

それが、俺の決めたルール。
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