Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「生でいいですか?」

「はい。」

その頼りない返事が、無茶苦茶気になるけれど、仕方がない。

「はい!ビールね!!」

元気だせよ!夏目さん。

そんな意味を込めて、彼女の前にビールを差し出した。


次の瞬間、ボロッと彼女の目から、涙がこぼれた。

「夏目さん?」

やばい、やばい。

泣きだすなんて、やばい。

俺は咄嗟に、おしぼりをもう一枚、彼女に渡した。


「親方……」

「はい?」

その言葉は、俺にとって、衝撃的な一言だった。



「私の、好きな人……結婚するんだって。」



えっ…

なんだよ、それ。


「相手は、ウチの会社の受付の子なの。」


受付の子?

しかも同じ会社の???

あいつ、夏目さんの事、見捨てたのかよ!!


「……で?夏目さんは、相手に気持ち伝えたんですか?」

夏目さんは、首を横に振る。


そうだよな。

そんなこと知ったら、好きだなんて、言えないよな。
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