Chain~この想いは誰かに繋がっている~
俺は気がついたら、カウンターを飛び出して、店の外の暖簾を外していた。

「親方?」

「今日はもう店閉めましたんで。他に、客来ないですから。」

俺の大事な夏目さんが、深く傷ついているんだ。

こんな時に、他の客の相手なんか、してられるかよ!!


「だから我慢しないで、思う存分飲み食いしてください。俺のおごりです。」

そして、俺は夏目さんの目の前にあるグラスに、ビールを注いだ。

「親方……」

「あっ、なにかつまみ、出しますね。待っててください。」

夏目さんを励まさなきゃ。

俺が、励まさなきゃ。

そう考えながら、冷蔵庫を漁る。


「あっ、あった。ありましたよ。夏目さんの好きなイカの塩辛。」

これを美味しいと言って、笑顔いっぱいになってくれた夏目さん

それをもう一度見たくて、俺もいっぱいの笑顔で、振り向いた。


でもそこには、夏目さんの笑顔はなくて、代わりに涙でグチャグチャになった夏目さんがいた。

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