Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「いらっしゃい、夏目さん。」

「…ご無沙汰です。」

夏目さんは苦笑い。

それでもいい。


「生ですか?」

「え、ええ……」

いつもと同じように、ビールを夏目さんの目の前に置く。


「どうですか?最近は。」

「ええ、なんとか。仕事の方は、順調に行ってます。」

いつもと同じ会話。

俺はそれが、たまらなく嬉しかった。


ほほ杖をついて、ほら、あの若いバイトの女の子の事を話す。

へえ~、それで?

適当に相槌を打ちながら、夏目さんと話をしているうちに、他の客の料理を出す。


そして、また一人また一人と客が帰るうちに、店には夏目さんと、俺の二人だけになった。

「じゃあ、私も帰ろうかな。」

財布を出した夏目さんに、手を横に振る。

「お代はいいですよ。」

「どうして?」

すかさず否定の顔。

「今日は、俺のおごりですから。」
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