Chain~この想いは誰かに繋がっている~
サーバーの掃除も終わって、急いでエプロンを外す。

レジのお金を全部、ビニールの袋に入れて、レジの集計を押す。

「今、着替えてきますね。」

足元をもつれさせながら、奥に行こうとする俺に、夏目さんは、口元に手を当てて、こう言った。


「ゆっくりでいいですよ。私、逃げませんから。」

おっと、さっきの確認。

夏目さんには、バレてた?

フワフワしながら、私服に着替えて、また店へと戻り、さっきのレジの集計が書かれたレシートを、カバンの中に、無造作に入れる。


「お待たせしました。」

「ううん。ちっとも。」

夏目さんの笑顔に、こっちも笑顔になる。

「電気、消しますよ。」

「はい。」

外に出て、店の玄関に鍵をかけると、夏目さんの方を見た。

寒そうに星空を見上げている夏目さんが、また違った夏目さんに見えた。


「行きましょうか。」

「ええ。」
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