Chain~この想いは誰かに繋がっている~
アルバイトだけど、適当な知識は持っている。


「ところでお客様、会員証はお持ちですか?」

「ああ、ごめんごめん。持ってる持ってる。」

財布から取り出した会員証。

有効期限を見る為に、裏面を見た。


【小宮山 剛】

大人びた、あの人の字で書かれた名前。


「はい、こちら会員証のお返しと、DVDになりますね。来週の木曜日まで、ご返却お願いします。」

DVDと会員証を渡す時に、一瞬だけ触れた指。

「ありがとう。」

その笑顔に、ドキッとした。

「この前、そこの棚の前で、質問に答えてくれた店員さんでしょう?」

「えっ!」

ウソ、覚えててくれた。


「ええ、そうでしたね。あの映画、あと一か月くらいでDVDになりますよ。」

他のお客、他のスタッフがいない事をいい事に、私はその小宮山さんというお客と話しこんでしまった。

「今日はありがとう。助かった。また頼むね。」

「はい。」
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