Chain~この想いは誰かに繋がっている~
もちろん、今月いっぱいで仕事を辞めることも、実家に帰ることも言えなかった。


1週間後、私はアパートの契約終了も待たずに、引越しを始めた。

実家に帰るって言った途端、引越しの費用は、全部親が負担してくれたしね。

驚いたのは、自分の荷物の少なさ。

10年近く住んでいたって言うのに、意外に何にもなくて、自分が東京にいた証って、こんなものかぁって思った。


荷物は頼んだ引越し業者に全部お任せして、私は一人新幹線に乗る為に、いつもの地下鉄に乗った。

ああ、そうか。

この地下鉄に乗るのも、今日が最後か。

今後、東京に遊びに来たって、大した観光地でもないから、ここに来ることもないし。


あっけなかったなぁ。

そんなことを思いながら、やってきた地下鉄に、乗りこもうとした時だ。

グイッと、誰かに腕を掴まれた。

「ヒャッ!」

びっくりして、変な声を出してしまった。


「ごめん!」
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