Chain~この想いは誰かに繋がっている~
相手の声の大きさに、周りはジロジロと、私達を見て行く。

うわぁ、すごく恥ずかしい。

こういう時は、早々に引き上げるのが一番。


「ありがとうございます。でも、もう田舎に帰るって決めたので……」

そう言って、軽くお辞儀をして、地下鉄に乗ろうとした。

「俺、君の事をずっと見ていた。」

振り向いた私を置いて、地下鉄のドアは閉まり、ゆっくりと去って行った。

「仕事遅くまでして、疲れて眠ってるところとか、乗り過ごしそうになって、起こしてあげた事もあった。」

「あっ……」

そう言えばあった。


最終に乗ったのに、私、眠ってしまって。

誰かに肩を叩かれて、急いで起きて、そのまま地下鉄のホームに走るように降りたこと。

「痴漢に遭っている君を、助けた時もあった。」


あっ、あの時!

助けてくれた人!?

お礼を言おうと思ったけれど、顔を覚えていなくて、話しかけられるのをずっと待っていたのに!
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