Chain~この想いは誰かに繋がっている~
でもそれは、私が行きやすいようにって言う、彼の優しさだってわかる。

そして見える、次の電車のライト。


「ありがとう。」

私は彼の目を見つめて言った。

「私、あなたに出会えてよかった。」

正直な私の気持ち。

「あなたと出会えた東京に来て、本当によかった!」


さっきまで、色褪せて見えた地下のホームが、突然色付き始める。

思い出も全部消し去って、また一から田舎で、やり直すんだって、そんな事も思ってた。


次の瞬間、音を立ててホームに停まった地下鉄のドアが、勢いよく開く。

私は荷物を持って、地下鉄に乗った

「バイバイ。」

笑顔でさよならを言った。

「気をつけて。」

彼も笑顔で、手を振ってくれた。

そして、二人を振り切るかのように、ドアが閉まる。


これが最後。

私をずっと見守ってくれていた彼を眺めながら、地下鉄は走りだした。
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