Chain~この想いは誰かに繋がっている~
なんとか落ちる前に、自力で這い上がる。

「えっ?」

「うふふ。下林さんって面白い。」

俺の隣でクスクス笑っているのは、この前のストッキング事件の仕返し?


「この前、ランチに行く前に、下林さんにストッキング伝線してるって言われたましたよね。」

ほら まだ覚えてるし。

「あの時は、そんなところ見ないでよ!って恥ずかしさの方が大きかったですけど、」

「けど?」

「コンビニでストッキング買って、トイレで履き変えていたら、他の人に見られる前に教えてもらって、返ってよかったかなぁなんて、思ったりもして。」

俺の胸の中に、得体の知れない温かいものが、モアーっと広がった。


「だから今になってしてみれば、下林さんに感謝です。」

“感謝”

その言葉を俺はどれほど、待ち望んでいたんだろう。

「俺の方こそ、ありがとう。」

「ええ?」

思いがけない俺の言葉に、彼女はわざと聞き返した。
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