Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「今の一言がなかったら、俺、優しくない人間に成り下がっていたかも。」

「はははっ!」

その明るい笑顔が、今までの俺の行動を、正しいものだって言ってくれる。


「でも本音を言うと。本人が気づくのを、待った方がいい時もあると思いますよ。」

「へ?」

「じゃないと、本当にお節介だけの、おじさんになっちゃいますから。」


くそっ!

それがオチかよ!!


夜の22:00。

いつものように、会社帰りに地下鉄に乗る。

今日も彼女はいる。

相変わらず、たくさんのDVDを持って、彼女は俺の目の前の席に座っていた。

気のせいか、彼女。

辺りをキョロキョロしてるんだろうけど、気のせいなのかな。


ハッ!

まさか、俺を探している?

この前の痴漢から助けたお礼を言いたくて!?


そんなわけないか。

第一、地下鉄をさっさと降りて行った彼女が、助けた俺の顔なんて、知ってるわけもないし。
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