Chain~この想いは誰かに繋がっている~
俺はその夜、映画館に行った。

無論、メンズデーだったから。


「大人一枚。」

「はい。中央のお席ですね。」

顔を上げると、毎週この時間にシフトが入っているというお姉ちゃんの笑顔があった。

「空いてる?そこの席。」

「はい!空いてます。」

そう言うと、彼女はスッと俺に近づき、「と言うより、空けておきました。」と、囁いた。

「ハハハっ!」

可笑しくなって笑った後、今度は俺の方から、お姉ちゃんに近づく。

「君、なんて名前?」

「伊勢です。」

お姉ちゃんは、胸にある名前のバッチを見せてくれた。

「伊勢、何ちゃんって言うの?」

一瞬、戸惑った表情をしたお姉ちゃんは、チラッと横を見て、誰もいないことを確認した。


「映梨子です。」

「映梨子ちゃんね。」

恥ずかしそうに頷くお姉ちゃんに、俺は素朴な疑問を投げかけた。
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