Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「映梨子ちゃんは、俺の名前、知りたいと思う?」

ふとお姉ちゃんを見ると、表情が固まっていた。

たぶん、質問の趣旨が、わからなかったのだと思う。


「ごめんね。変なこと聞いて。」

「いえ……」

「チケット、取れた?」

「は、はい。」

映梨子ちゃんが見せてくれたチケットは、またまたドンピシャの真ん中。

「ありがとう。来週も頼むよ。」

俺はそう言って、チケット売り場を離れた。

「あっ、あの……」

映梨子ちゃんが、背中から『お客様!』って呼んでいるのが聞こえたけれど、知らないふりをした。


映梨子ちゃんは、俺の名前を知らない。

それは当たり前のことだ。

だって、俺はただの客の一人なんだから。


地下鉄の彼女も、俺の名前を知らない。

それも当り前のこと。

だって


彼女の瞳に、俺は映っていないのだから。
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