Chain~この想いは誰かに繋がっている~
遠まわしにお伺いするような、心の余裕なんてなかった。


しばらくの沈黙。

見つめ合う二人。

ああ、彼女。

よく見ると、こんな顔してたんだ。


「あの……」

困った顔をした彼女は、チラッと俺が掴んでいる腕を見た。

ハッとして、彼女の腕を離す。


「あの…お節介かもしれないけれど。」

何を言い始めるんだ、俺!

だけど、意を決して彼女に一歩近づく。

「どんなに辛いことがあっても、乗り越えられないことは、何一つないと思う。」

実は彼女、大量のDVDと共に、大量の苦悩を背負っていたのかもしれない。

「影で努力した結果は、必ず現れるよ!だから、ここで逃げちゃダメなんじゃないか?」


俺はずっと、何を見てきた?


いつも帰りは俺と同じくらい遅くて、だけど大量のDVDを、ちっとも嬉しそうに見ていなかった。

趣味とかじゃなくて、仕事の一環だったんじゃないのか?
< 85 / 125 >

この作品をシェア

pagetop