Chain~この想いは誰かに繋がっている~
「DVD抱えながら、泣いている君の隣に、ずっと座っていた事もあったよ。」

何をしてあげたらいいか分からずに、でも何かしてあげたくて、悩んだ末に出した結論だった。


いつの間にか、彼女の目からは、あの日と同じように涙がこぼれ落ちた。

「泣かせちゃったね。」

手を伸ばして、その涙を拭った。

「ありがとうございます。」

やっと聞けた、彼女のお礼の言葉。

そんなこと思ったら、自然に笑えた。


「なんか君の涙って、温かいね。」

「だって、あなたの気持ちが温かいから……」

返ってきた思いがけない言葉に、俺の心臓がトクントクンと波打つ。


「抱きしめてもいい?」

そう聞いたのに、俺は彼女の返事を待たずに、ぎゅうっと彼女を強く抱きしめた。

ああ、甘い香りがする。

シャンプーとか、香水じゃなくて、彼女の素の匂いだ。


やっぱり、帰したくない。

このまま二度と彼女と会えなくなるなんて、俺には耐えられないかもしれない。
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